気にしすぎ彼女




リカアン要素あり。でも全員ふくむギャグ。



「セレーナ」
あら、リカルドさん、何かという顔で言葉は発しない依頼主。
明らかに不機嫌なその様は、俺でなくてもわかるほどの表出だった。
ミルダはなにかおたおたした様子だし、ベルフォルマやラルモも冷や汗をかいている。
一方でアニーミは冷静な様子だっもんだから、セレーナが不機嫌な理由がなんとなくわかってしまった。

今晩の晩飯担当は俺。
つまり、今後のセレーナの気分は俺にかかっているというわけであって…。

「今晩、サラダうどんとチキンドリアどちらがいい?」
「……」

我ながら、酷な選択肢を並べてしまった。チキンドリアなど、イタリア料理はセレーナの大好物。
サラダうどんは、アシハラにいたときに宿屋で覚えた真新しいレシピだった。
さらっと、食べやすく健康的な料理で、他のメンバーもお気に入りのようだった。

「どうする、セレーナ」

半ば詰め寄ってみる。
聖女と呼ばれる彼女が、晩御飯のメニューにここまで惑わされるのかと思うと、なんだか楽しくなってきてしまった。

「(…うわ、リカルドのやつえげつね〜!!)」
「(ちょ、スパーダ!聞こえちゃうよ〜〜)」
「(なんや、ルカ兄ちゃん。そんな大した話やないやん。)」
「(じゃぁなんで隠れてるのよ私達…)」

ここから他のメンバーが隠れてこちらを伺っているのがわかる。

「…リカルドさん。」
「なんだ。」
「さ…、サラダうどんでお願いします」

一斉に、ニヤリとするような空気があからさまに流れている。

それを感じて恥ずかしいのか腹立だしいのか、セレーナは複雑な顔をしていた。
ここまでからかってきたが、さすがに可哀相に思えてきた。

「セレーナ、いいのか?」
「きょ、今日はヘルシーなものを食べたい気分なんです!」
「昨日、チキンドリアが食べたいと寝言でいってたぞ」
「え…」

セレーナは真っ赤になった。
それをみて、また楽しくなってしまった。

「いっ、いつ、そんな」
「だから眠っていたときだ」
「そんなこと…っ」
「だいたい…」

なんで女という生き物は、そんなに体型を気にするんだろうか。
とてもじゃないが、セレーナが気にしなければならない体型とは思えなかった。
すっと、片手を腰まわりにあてた。びくりとすごんだ彼女が可愛らしく、愛おしかった。

「いつも気にする必要はないといってるだろう」
「だって、私、イリアやエルみたいに細くて綺麗じゃないです…」

劣等感。
自分にしか感じない敗北感。
そんな感情には興味はないが、やはり相当辛いものなのだろう。

「心配いらん。俺はそっちの方が好きだ。」

それを聞いたセレーナはほっとしたのか、笑顔になった。
すると、俺の裾をつかんでこそりと言う。
「ぁ、の…でも、デザートは我慢します…リカルドさんのおいしくてたくさん食べてしまいます、から」
おどおどしながらそう言うセレーナがたまらなく可愛い。
抱きしめたくなってしまったが、四人がこちらを、いかにも驚嘆とした表情でみているもんだから、逆に面白みがなくてできない。
セレーナとの関係はとっくにバレているだろうとは思っていただけに、どうしてよいものかわからなくなってしまった。

というわけで。

「…セレーナ、買い出し付き合ってくれるか」
「はいっ。チキンドリア、よりカロリーの少ない調理法していただくために私が品定めします」

案の定。同意。連れ出し成功。
帰ってからの四人のツッコミは後ほど、甘んじて受けるとしよう。


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サラダうどんなんてものはレシピにはないが(笑)
リカルドさんのキャラがよくわからない件。


2011




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